いつでも、どこへでも、自由に移動できる、便利な自動車。 自動車は現代社会に とって必要欠くべからざるものとなった。同時に交通事故や公害問題、渋滞等、新 たに解決すべき問題も発生させた。最近ではこの状況を解決すべく、電気自動 車、ハイブリッドカー,燃料エンジン自動車など エネルギー・地球環境に対応した 車の開発が進められている。また自動車と道路のシステムを高度情報化すること で、交通問題の解決を図ろうとする計画(高度道路交通システム(ITS))もいよいよ 実現が近い。しかし、これらの計画は新たな渋滞、環境問題など別の交通問題を 発生させる可能性を含み、交通管制・経済的観点からも交通事情の予測が一層重 要になってきた。
最近、交通の流れ、渋滞状況のシミュレーションが再び盛んになってきた。その 理由として、上に述べた事情に加えて、交通流解析に従来から用いられてきた流 体力学的手法 や追従モデル が改良され、「最適速度モデル」により高速道路の 現実の渋滞が説明できるようになったなど、新たな進展が見られたことが挙げられ る。また、「セル・オートマトン(CA)モデル」を使うことにより、問題が大幅に簡素化さ れ、取り扱いが容易になった。渋滞の固まりの生成・消滅、そのパターンはフラクタ ルの概念によって理解することでき、物流・情報ネットワークの渋滞とも関連が深い。 さらに、人間の交通経路選択の挙動をも考慮すれば、交通流は一種の「複雑系」と 捉えなければならない。
今では交通問題が、交通工学の分野から物理学、数学の分野にまで広がりを 見せ、学際的色合いを持ちつつある。このような状況に置いて、行政、業界、学会 等各界が集まって、学際的に最新の成果を示し討論し合うことは、それぞれの分 野に大いに刺激を与えるものと期待できる。このような趣旨で、交通流数理研 究会を結成し、年1回のシンポジウムを開催してきた。今回第6回のシンポジウム を開くにあたり、多数のみなさまのご来聴を歓迎するとともに、活発な討論の場と なることを期待する次第です。